今回は、日本神経学会から発行されているてんかん診療ガイドラインについて説明していきたいと思います。
ガイドラインを直接ご参照される場合は、「てんかん診療ガイドライン2018」からどうぞ。
はじめに
そもそもガイドラインとは、診療の指針となる、目安となるエキスパートからの提案ということになると思います。
どの疾患でもそうだと思いますが、てんかんにおいては特に個別の症例の多様性が幅広いため、ガイドラインで診療をがっちり決められていく従わなければいけない規則、というより手早くエキスパートの意見やこれまでのデータをレビューするすることに長けています。
また、一般公開されていますので情報へのアクセスも良いです。
したがって、ふと困ったときにすぐに知りたいことを俯瞰できることが優れていると思います。
一方で欠点は、ガイドラインが策定されたときは最新でも、情報が簡単にアップデートできない、という点があります。
例えば、ラコサミドなどの新しい薬剤の位置づけは適応の拡大や静注薬の存在から、比較的発行されてからすぐに変わってきています。
てんかんはおおまかにいって100人に1人が発症する頻度の高い疾患です。
したがって、てんかんを専門としない医師が診療することが多くなるため、てんかんの診断から検査、治療まで広く網羅されている無料ですぐにアクセスできる文書は貴重だと思います。
ガイドラインの内容について、特に注目すべき改訂点について以下に記載しています。
ガイドラインの内容
てんかんの定義
これまでは、24時間以上の間隔をあけて2回以上の非誘発性の発作を認めることがてんかんの定義でしたが、今回の改訂では、1回の非誘発性発作のみでも、統計学的に60%以上の確率で発作を繰り返す可能性がある場合においてもてんかんの診断が可能になりました。
器質的な成因の存在や、てんかん性脳波異常の存在、もしくは特定のてんかん症候群の診断などです。
これは1回の発作で治療を急がなければいけない、という意味ではなく必要であれば(明らかに再発のリスクが高ければ)1回目の発作でも治療開始を考慮できる、という定義となっています。
新規発症部分発作の選択薬
8年ぶりの改訂となったガイドラインのため、その間に承認されたいわゆる新規抗てんかん薬の追記がされています。
2010年にはカルバマゼピンだった第一選択薬に、2018年ではレベチラセタム、ラモトリギン、次いでトピラマート、ゾニサミドに追加されました。
これらの薬剤に、副作用プロファイルや患者背景を勘案して選択していくことになります。
新規発症全般てんかん発作の選択薬
これまで通りバルプロ酸ですが、別の薬剤の選択肢が増えたことにより妊娠可能年齢女性においては他の薬剤も考慮する、もしくは低用量にすることが推奨されています。
てんかん重積状態
てんかん重積状態の定義が改訂されました。
ILAEの推奨する5分以上を早期てんかん重積(治療開始の目安)と定義し、30分以上持続する場合を確立したてんかん重積(後遺症の危険がある重積)としています。
妊娠とてんかん
ガイドラインでは妊娠可能年齢女性の抗てんかん薬として、比較的安全性が示されている薬剤としてラモトリギンとレベチラセタムが記載されています。
当サイトにもてんかんと妊娠について記載しています。こちらをご参照下さい。
急性症候性発作
急性症候性疾患の成因に新たに抗NMDA受容体抗体脳炎の記載がなされています。
最後に
詳細は本文をご参照頂ければと思いますが、てんかん診療ガイドライン2018について特に改訂点に注目して説明しました。