ここでは抗てんかん薬の薬物相互作用について説明します。
はじめに
抗てんかん薬には、薬物相互作用があります。
なかでも薬物の代謝における作用を介して、併用しているお互いの薬物の血中濃度に影響を与えます。
最も有名なのがチトクロムP450(CYP)の誘導と阻害です。
代表的な薬剤はフェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン(CBZ)といった酵素誘導薬(主にCYP3A4/5)により、他の薬剤の血中濃度を下げる作用があります。
したがって、これらの薬剤と併用して抗てんかん薬を用いる場合には、例えばその薬剤が無効だった場合に、薬が効いていないのか、血中濃度が上がっていないのか、注意して判断する必要があります。
逆にスチリペントールはCYPの阻害作用を有し、他の薬剤の血中濃度を上昇させる可能性があります。
例えば、スチリペントールを内服している場合に副作用が出現した場合に他の薬剤の血中濃度にも注意が必要です。
抗てんかん薬の相互作用のみならず、CYP3A4/5は様々な薬剤の代謝に関与しています。
したがって併用している薬剤(例えば抗凝固薬など)がある場合には、それらのモニタリングも必要です。
また、CBZは自己で誘導したCYP3A4により、投与初期にはCBZの血中濃度は上がりにくいという特徴があります。
マクロライド系抗菌薬はVPA、CBZ、ZNSの血中濃度が上昇するため注意が必要です。
一般的にいわゆる新規抗てんかん薬には薬物相互作用が少ないという利点があります。
GBPやLEVは、CYPによる代謝やグルクロン酸抱合を受けず、相互作用が少ないという特徴があります。
UGT (uridine glucuronyl transferase)
もうひとつの代謝経路にUGT (uridine glucuronyl transferase)があります。
抗てんかん薬でUGTを介して代謝されるのはVPAとLTGです。
VPAとLTGはグルクロン酸抱合に対して競合するため、併用の際にはLTGの代謝が遅延し血中濃度が上昇しやすいことに注意が必要です。
抗菌薬のカルバペネム系薬剤は、グルクロン酸抱合を促進し、VPAの血中濃度を下げるため禁忌とされています。
食事との相互作用
食事との関連性ではグレープフルーツがCYP3A4を阻害するため特にCBZでは血中濃度が上昇してしまうため注意が必要です。
また、ケトン食療法を行っている場合、ZNSやTPMの併用で尿路結石のリスクが高まるといわれており注意が必要です。