脳炎・脳症(自己免疫性脳炎含む)

ここでは、てんかんとの鑑別を要するけいれんをきたす疾患として脳炎・脳症について説明しています。

はじめに

”けいれん”はあくまで症状で診断名ではありません。

けいれんが起こった際には何が原因で起こったのかをアセスメントすることが必要です。

けいれんを呈する疾患は数多くありますが、今回はなかでも脳炎・脳症について述べたいと思います。

脳炎・脳症の診断

脳炎・脳症はかなり広い概念ですが、古典的な急性脳症の定義として「24時間以上持続する急性の意識障害」というものがあります。

脳の症状として「けいれん」や「意識障害」を呈する疾患群として総合的に診断されます。

病理学的に中枢神経系に炎症を伴う場合を脳炎、伴わない場合を脳症としていますが、実際の臨床では髄液細胞の増多をもって脳炎、脳症を区別しています。

これらを区別することに強い根拠があるわけではなく臨床的には同系統の疾患群として治療方針を組み立てています。

また、その原因や重症度はかなり幅広く、様々なタイプがあります。

分類には、その病態で区別する場合(i.e. 高サイトカイン)、原因で区別する場合(i.e. インフルエンザウイルスなど)があります。

脳炎・脳症の治療

一番大切な治療は全身管理です。

すなわち気道・呼吸・循環を安定させることが最優先になります。

また、非けいれん性てんかん重積状態を含めたけいてん・発作のコントロールも並行して行います。

必要に応じて、抗ウイルス薬・利尿薬の投与、抗炎症のためのステロイド療法、免疫グロブリンなどを検討します。

自己免疫性脳炎

意識障害がそれほど目立たず精神症状やけいれんなどが前面に立ち、特にてんかんとの鑑別を要する疾患に自己免疫性脳炎があります。

疾患概念の変遷があり、抗NMDA受容体脳炎、非ヘルペス性辺縁系脳炎などとも呼称されます。

典型的には感冒症状が先行し、その後に精神症・異常行動で発症します。

その後、けんれん、意識障害、不随意運動を伴うようになります。

若年女性では卵巣奇形腫の合併が多いとされていますが、小児の場合は腫瘍の合併の割合が低く、症状もけいれんが目立つことが特徴です。

治療は、腫瘍がある場合は腫瘍の摘出を最優先に行い、ステロイドパルス療法・免疫グロブリン・血漿交換などを検討することが多いです。

これらの治療に加えてリツキシマブやシクロフォスファミドなどを検討します。