ここでは小児における頭をぶつけたときの対応についてまとめています。
はじめに
こどもは成長に伴い身体的な活動があがってくると行動範囲もひろがります。
その一方で、まだ身体的には安定しておらず、危険察知や運動の発達に未熟性もあるため頭をぶつけてしまうことも多いです。
まず、このような特性を理解しつつ予防していくことも大切ですが、予知しないことが起こることもあると思います。
そのような場合の対応について参考になる情報をお示しできればと思います。
頭をぶつけたときの状況は
まずは、頭をぶつけた時の状況が大切です。
例えば、交通事故や高所からの転落(目安:2歳未満0.9m以上、2歳以上1.5m以上)、ヘルメットをしていない自転車での転倒などです。
また、ぶつけたときにすぐ泣いたか(意識をうしなっていないか)ということも大切です。
こどもの場合、自分で状況を説明できない場合や周囲の人が目撃していない場合もあるかもしれませんが、状況を整理しておくと医療機関の受診の際に役立ちます。
症状は
おおまかにいってぶつけた後に普段と違った様子がないか、ということが大切です。
意識
意識はこどもですと評価が難しいこともありますが、もし目を開けていたとしても明らかに普段と反応が違う、などという状況は意識障害を示唆している可能性があります。
例えば、よびかけに目を開けるか、話すか・声をだすか、痛み刺激から逃げるという反応があるか、などが意識を評価するポイントになります。
嘔吐(吐いてしまった)
嘔吐も大切な症状のひとつです。
ただ、赤ちゃんなどはもともと吐きやすい場合もあるので、やはり普段と比べて明らかに吐いている頻度、量がおかしい場合に、症状である可能性があります。
その他
また、大きな血種や頭蓋骨が動揺している所見なども重要なサインです。
その他には強い頭痛・不機嫌、けいれん、呼吸がおかしい、などの症状も頭部をぶつけた際にでてくる可能性がある症状になります。
頭蓋底という内側の部分の骨折を示すサインとして、耳の後ろ側が腫れてくる・出血斑がでてくる、目の周りが黒くなる(パンダの目徴候)などがあります。
もともと血液のご病気(血友病など)をもっている場合や、血が固まるのを防ぐ薬(抗凝固薬など)を内服している場合は、より一層の慎重な対応が大切になります。
病院受診の目安
上記の症状で当てはまるものがある場合には、病院の受診を検討すると良いと思います。
症状の経過観察
頭部をぶつけた時に後で少し遅れて症状がでてくることがありますので症状の経過観察をすることも大切です。
一つの目安でリスクが高いのが受傷後4-6時間くらいまでといわれていますが、症状の変動する可能性もあるため24~48時間程度は観察が必要です。
頭部CTについて
頭部CT検査は、頭蓋内の出血や骨折を発見するために役立つ代表的な検査です。
比較的短時間に撮影できるため緊急でも検査に役立ちます。
ただ、欠点として被ばくの問題がありますので、特に小児に対しては慎重な適応も求められます。
また、撮影中に動いてしまうと画像がうまく取れないため、年齢によってはそれに対する対応(眠り薬を使用するなど)も検査を実施するときには考慮しなくてはいけない点です。
したがって、上記の情報や症状などを総合して検査の適応を検討することが多いです。
頭部打撲後のてんかん発症について
頭を強くぶつけた際に、その後てんかんを発症する可能性があります。
通常は、受傷してから1週間以上経過した後に1または2回以上の非誘因性の発作により診断されまうs。
過去の研究をみると、
一般人口におけるてんかんの発症率が0.7%くらいといわれており、重症の頭部外傷(sever TBI)の場合は10-20%くらいといわれています。
軽度の頭部外傷(意識消失や健忘が30分以内)の場合には、最近の報告で、頭部外傷後てんかんの17%を占めていたといわれ、一般人口よりは高いかもしれません。
Park JT et al. Epilepsy Due to Mild TBI in Children: An Experience at a Tertiary Referral Center. J Clin Med 2021.23:5695.
これらの軽度の頭部外傷後のてんかんの場合は、頭部CTや脳波が正常の割合が多く、その症状の認知に注意が必要な可能性があります。