ここではトウレット症候群・チックについて説明しています。
はじめに
一般的にも認知されつつあるチックとい言葉ですが、正しく認知されているとは言い難い面があると思われます。
まず、チックとはどのような状態でしょうか。
チックは突発的、急速、反復性、非律動的な「運動」または「発声」であるといわれています。
それぞれ運動チック、音声チックと呼ばれます。
単純な動きや発声の場合は単純チック、一見目的をもった動きにも見える動きや発声を複雑チックと言います。
例えば、まばたき、口を動かす、首をふるなどは単純運動チックになります。
一方で、社会的に受け入れがたい言葉を発声してしまう(汚言)、人の行動や言葉を繰り返してしまう(反響言語)、などは複雑音声チックになります。
なかでも運動チックと音声チックの両方を認め、1年以上持続する場合をトウレット症候群といいます。
過去にはトウレット症候群の診断に汚言(言ってはいけない言葉を口にしてしまう)が必須でしたが、近年上記のように変わりました。
しかし、トウレット症候群における強迫性(分かっていても止められない)は中核として重要と考えられています。
チックについて
チックは、通常不随意(勝手に動く)ですが、ある程度の時間おさえようとすればおさえられるという特徴があります。
ストレスや緊張、睡眠不足などで症状は悪くなることがあります。
また、睡眠中は通常症状は認められません。
7~11歳に最も多く認められます。男児の方が多く認められます。
DSM-5という診断基準で、チックは神経発達症の一部として位置付けられています。
チック症の下位分類にトウレット症があります。
それ以外には、持続性運動または音声チック症、暫定的チック症(発症から1年未満の場合)などがあります。
チックの重症度はかなり人により異なると言われています。
軽症な一過性なもの(暫定的チック)を含めますと有病率は5-10人に一人というデータもあり、チック症はかなり一般的です。
その多くは自然に軽快します。
しかし、その一方で治療に難渋する重度なトウレット症候群を呈する場合もあります。
チック症には強迫性障害やADHDの合併が多いことにも注意が必要です。
治療を考慮する際には、これらの状況を考慮した治療が望まれます。
具体的には、軽症な場合は一過性で自然軽快の可能性があること、併存症に対する配慮が必要なことなどです。
治療について
原則的には心理教育や環境調整が大切になります。
前述のようにチックは分かっていても止められない辛い症状のため、過剰に指摘したり叱責しないことは重要です。
自然経過でも、症状が良くなったり悪くなったりします。
また規則正しい生活も大切です。
改善に乏しい場合には薬物療法を検討します。
薬剤としては、リスペリドン、アリピプラゾール、グアンファシン、クロニジン、抑肝散などが有効とされています。
ADHDとチックが併存していることがありますが、その場合はメチルフェニデートがチックを増悪する可能性があり、注意が必要です。