今回は、てんかんに似た病気として熱性けいれんについて説明します。
近年、熱性けいれん診療ガイドライン2015が発行されていますので、詳しく調べたい方はそちらをご参照頂ければと思いますが、こちらの記事ではもう少しかみ砕いて説明したいと思います。
そもそも熱性けいれんは、こどもが(多くの場合1歳から6歳くらい)発熱に伴ってけいれんを起こす状態で、熱性けいれん以外の病気が除外されている時に診断されます。
また、血縁の方に熱性けいれんの既往があることがあります。
熱性けいれんの典型的な経過は、熱の上がり際(24時間以内)に数分以内の全身のけいれんがあり、その後の意識の戻りが比較的スムーズな場合です。
幸い熱性けいれんの多くは、治療の必要がなく、自然に改善する予後の良いご病気です。
ただし、けいれんを引き起こすそれ以外の病気(髄膜炎や脳炎などを含む)も、熱性けいれんと似たような症状を呈することがあり、熱性けいれん以外の病気との区別が、特に発症直後には容易ではないことがあります。
小児科医としては、頻度が多くて治療の必要性がほとんどない熱性けいれんのこども達から、頻度は少なくても後遺症が残ってしまうかもしれない、治療が必要なこどもを見逃さない注意が必要です。
ある程度、検査などでそれらの徴候をつかむこともできますが、しかし圧倒的に大切なのはやはりそのこどもの経過です。
以下のような場合は一般的に注意が必要です。
・発症年齢が好発年齢ではない(例えば生後6か月未満、6歳以上)
・発熱とけいれんのタイミング(発熱後24時間以上経過してからの発症など)
・けいれんのタイプ(15分以上の長いけいれん、けいれんに左右差があった、など)
・けいれんの後に意識がさめない(熱性けいれんでも2-3時間くらいは覚めない場合もありますが、それ以上経過しても覚めない・深い昏睡など)
けいれんした場合、特に上記の項目にあてはまる場合は受診して診察を受けられることを推奨します。
てんかんとの関連で言いますと、てんかんの発作が熱に伴っておきることもありますので、熱性けいれんとの区別が容易ではないこともあります。
このような場合も同様に、経過の観察が重要です。
例えば、初めは熱に伴ってけいれんしていたため熱性けいれんと診断を受けていたが、数年後から熱がないのにけいれんするようになった、などはてんかんの発症、もしくは合併を示唆する病歴です。
脳波は、これらの状況で大変重要な参考になる検査ではありますが、残念ながら脳波のみで熱性けいれんとてんかんを区別することはできません。
熱性けいれんは一般的なご病気ではありますが、てんかんとも親戚のような関係のご病気です。当サイトが少しでもお役に立ちましたら幸いです。