発達の遅れについてここでは説明しています。
はじめに
発達遅滞(はったつちたい)とは、発達の遅れに対して慣例的に用いられている用語で精神発達遅滞や運動発達遅滞などと分類されます。
また、言葉のような特例の領域を指して言語発達遅滞ということもあります。
良く混同されやすい用語に発達障害があります。
発達障害は、自閉症やADHDのような社会性、衝動性、発達の偏りなどの特徴をもつ症候群です。
当サイトの発達障害に関する記事もご参照下さい。
さらにややこしいことに、発達遅滞と発達障害が合併して区別が難しい場合もあります。
発達の個人差
発達には個人差があります。
また、発達のパターンも人により様々です。
したがって、もし発達がゆっくりでもあえて病気として診断名をつけることの意味がない場合もあれば、逆に発達が早ければ良い、というわけでもありません。
医療としての立場からみる発達遅滞とは、患児やそのご家族にサポートが必要、もしくは早期に(医療的、非医療的に限らず)介入を行うことで、メリットがある場合と考えます。
言語発達の目安
発達のマイルストーンの目安というものも存在します。
言葉に関して言うと1歳6か月で、有意語(意味のある言葉)の表出がない、簡単な命令の理解ができない、です。またこの時期に共感性を示す指差しがあるかも大切です。
3歳では、2語文がでていない、などは言葉の発達の遅れを示唆するひとつの指標です。
知的能力障害(知的発達症)
近年まで慣例的に知的障害という用語でしたが、DSM-5やICD-11といった診断基準では知的能力障害という用語が用いられるようになりました。
知的な能力の全体的な障害がある場合に知的能力障害といいます。
診断基準の項目は大きく2つあり、
①知能検査で評価された知的機能(IQ)が低く、②日常生活の適応に支障がでる場合に診断されます。
乳幼児期に精神発達遅滞と慣例的に考えられていた児の原因が、知的能力の障害だった場合があります。
つまり、発達遅滞とは小児期の発達の様子からみた移行的な状況であると考えられます。
発達がゆっくりだった場合に、それが何に起因するかの評価が大切です(経時的な変動もあり、簡単ではありませんが)。
身体的、発達面、行動面、コミュニケーション、精神面、環境などの多面的な評価が必要になります。
原因は多岐にわたります。
大きく分けて染色体異常、先天奇形、神経皮膚症候群、代謝・内分泌疾患、周産期脳障害、中枢神経感染症、てんかんなどが挙げられますが、原因不明な場合も多いです。
運動発達遅滞
運動発達に関しても同様の評価が大切です。
例えは1歳6か月でも独歩がない場合を指標に疑われますが、個人差が大きいですし、例えばはいはいを好まずに独歩が始まる場合などバリエーションがあります。
また、Shuffling babyといっておすわりのままいざりながら移動することを好むことがあります。
この場合は立位を好まないですが、1歳6か月から2歳までの間に歩行が可能になることが多く、運動発達のバリエーションと考えられています。
Shuffling babyには家族歴がある場合があります。
可能な限り運動発達の遅れが、筋力、筋緊張、麻痺、失調など何に起因するのか評価することを試みます。