点頭てんかん(ウエスト症候群)

ここでは、点頭てんかん(Infantile spasm、Epileptic spasms、ウエスト症候群、West症候群)という乳児期に多いてんかんのひとつのタイプについて説明します。

点頭てんかんと

まずは、点頭てんかんは様々な呼び名があり、混乱しがちです。

ここの記事は一般の方に向けて書いていますので、細かい違いはほぼないものとして、点頭てんかんと呼んで説明させて頂きます。

1841年にWilliam Westにより初めて報告されたためウエスト症候群と呼ばれています。

多くの場合、1歳までに発症します。なかでも生後3~7か月が多いです。

点頭てんかんには3つの特徴があります。

  • 点頭発作
  • 脳波におけるヒプスアリスミア
  • 発達の停滞・退行

これらの徴候がすべて必ず認められるわけではありません。

点頭発作(Epileptic spasms)とは

まずは発作である点頭発作についてです。

「点頭」とは「うなずく」という意味ですが、その名の通りうなずくような頭部を前屈させる短い動き(ときに両手や両足もビクッと振り上げるように挙上して)を数秒から10秒程度の間隔で繰り返し認めます。

この動きのセットを「シリーズ形成」と呼びます。

典型的には、この発作は発症時期は比較的軽く回数も少ないですが、徐々に強度が増して頻度が増加します。

いわゆる一般的なイメージのけいれんとは異なるため、はじめはてんかん発作であることを気づかない方もいらっしゃいます。

ときおり保護者の方が、この動きの時に児が不機嫌になる・なんか変な感じ、ということを気づかれて受診される方もいらっしゃいます。

当然乳児のことが多いので、言葉で表せるわけではないのですが、違和感を保護者の方が感じるようです。このような感覚は大事だと思います。

動きはYoutubeでも見れますので、上記の様々な病名・呼び名で検索してみることも良いかもしれません。発作はシリーズ形成してしばらく続く場合が多いため、携帯電話・カメラで動画を撮影頂くと、診断に役立つことがあります。

点頭発作のYoutube動画のリンクをしておきます。

やはり文章よりもこのような動画をひとつ見て頂くことのインパクトは大きのではないかと想像します。

Youtubeから引用

脳波所見(ヒプスアリスミア)

典型的には脳波所見に特徴的なヒプスアリスミアという所見がみられます。

これは脳の様々な領域から徐波、棘波、多棘波などの波が認められる状態を指します。

発達の停滞・退行

発症後に、今まで発達して出来るようになったことが出来なくなってしまう状態です。

例えば、笑わなくなる、反応に乏しくなる、指差ししなくなる、お座りや寝返りしないようになる、などです。

原因

原因は、様々です。発症前に脳障害の徴候が認められる症候性、と点頭てんかん以外に様々な検査や神経学的所見に異常を認めない潜因性におおまかに分けられます。

症候性は点頭てんかんの60-70%を占めると言われていますが(Epilepsia 2015; 56: 617-25)、その病因は様々です。

代表的なカテゴリーとして、中枢神経形成異常、神経皮膚症候群、染色体異常、遺伝子変異、先天性代謝異常、先天感染症(先天性サイトメガロウイルス感染症など)などがあります。

神経皮膚症候群、ダウン症候群、先天性サイトメガロウイルス感染症に関しては、別の記事もご参照下さい。

「神経皮膚症候群とは」

「ダウン症候群(Down症候群)とてんかん」

「先天性サイトメガロウイルス感染症」

治療

可能な限り早く治療を開始することが重要と考えられています。

治療にはACTH療法、内服薬(ビガバトリン、ビタミンB6、その他の抗てんかん薬など)、食事療法(ケトン食療法)などがあります。

ビガバトリンに関しては別の記事にも記載していますのでご参照下さい。

「ビガバトリン(サブリル®)」

点頭てんかんは難治性てんかんのひとつで、点頭発作が再発してしまう場合、神経学的予後が良くない場合、その他のてんかん発作を発症してしまう場合などがあります。

概して、良好な認知機能予後の症例が1/4、てんかん発作を認めない症例が1/3くらいと見積もられています[Pediatr Neurol 2020; 108: 54-64]。

また、最も予後に関連する因子は、点頭てんかんを発症する病因と言われています。

小児期の発達や発達の遅れに関しては別の記事もご参照下さい。

「発達遅滞とは(発達の遅れについて)」