この記事ではてんかんに関連した病態として神経細胞移動異常症(滑脳症・異所性灰白質・多小脳回など)について説明しています。
はじめに
てんかんは脳の生れつきの形成異常により発症することがあります。
大脳の形成異常症としては異所性灰白質・多小脳回・皮質異形成など様々なものがありますが、これらを総称して神経細胞移動異常症ということがあります。
胎児の脳が形成されるときのおおまかな流れとして、”神経細胞が増え”、”決まった場所に移動し、脳の表面で層を形成する”、”神経細胞に分化する”というプロセスがあります。
これらのプロセスで問題があると、その問題が起こった時期や程度により大脳に様々な形成異常が起こります。
神経細胞移動異常症はなかでも神経細胞が移動するプロセスに問題が起きたときに発症する症候群です。
これらの大脳形成異常症の症状のひとつにてんかんという病態があります。
神経細胞移動異常症の分類
神経細胞移動異常症の病態は幅広く、様々な分類がありますが代表的な疾患について以下に記載します。
- 滑脳症・皮質下帯状異所性灰白質
- 脳室周囲異所性灰白質
- 多小脳回
- 裂脳症
- 孔脳症
- 皮質異形成
滑脳症(lissencephaly)
滑脳症は、作られるべき大脳のしわがつくらせない形成異常です。
Miller-Dieker症候群は、滑脳症に特徴的な顔貌、心臓・指・腸管・腎臓などに合併症を認めることがある症候群です。
多小脳回(polymicrogyria)
大脳の表層の一部が小さく陥入して、MRIでは皮質が厚くなったようにみえる状態です。
シルビウス裂の近傍に認めることが多いです。
裂脳症(schizencephaly)
脳の一部がさけて、くも膜下腔と脳室がつながっている状態です。
境界の皮質に多小脳回を認めることが多いです。
最後に
神経細胞移動異常症は様々な形成異常を含んだ広い概念です。
近年、次々と原因遺伝子が特定されています。
今後、それぞれの形成異常症に関しても記事を作成予定です。