今回は、「てんかんと突然死」について説明します。
なかなか怖い話題ではありますが、残念ながらてんかんを患っている方の急死・突然死のリスクは、てんかんを患っていない人と比較すると高いと言われています。
どのような医学的なデータがあるかを今回はお示ししたいと思います。
はじめに
てんかん患者において突然死のリスクは一般の方に比べて高い(20倍以上)といわれています。
一般的に、てんかんに関連した突然死は、溺水や外傷、発作など原因が特定されたものと、それ以外の原因が特定されないものがあります。
この「予期せぬ原因が特定されない突然死」は、SUDEP; sudden unexpected death in epilepsy(スーデップ)と呼ばれています。
SUDEPとは
SUDEPは、幅広い年齢層で起こり得る病態です。
原因はまた明らかになっていませんが、呼吸機能障害(中枢性の低換気)や心機能障害(不整脈など)、脳機能停止、自律神経機能不全などが一部の病態として考えられています。
SUDEPの危険因子として、以下のものが挙げられていますが、まだ未解明な部分も多いです。
- 高い発作頻度
- 強直間代発作の存在
- 抗てんかん薬の多剤併用
- 頻回の薬剤変更
- 怠薬や急な服薬中断
- 夜間監視の欠如(同室寝でない、など)
- 長い罹病期間
- 若年成人
- 男性
SUDEPの多くは睡眠中に生じ、うつぶせ寝との関連性も言われています。
また、特にドラべ症候群(Dravet症候群)でSUDEPの発生率が高いといわれています。
ドラべ症候群に関する情報はこちらもご参照下さい。
ドラべ症候群では死因の60%をSUDEPが占めています。
SUDEPは、未解明な部分が多い病態です。
当然といえば当然ですが、可能な限り発作(とくに強直間代発作)を、少ない薬剤で調整することがSUDEPの可能性の観点から大切といえると思います。
これからも研究がすすんでいくことを望んでいます。
少し専門的な話題
少し専門的なデータのひとつに脳波所見とSUDEPとの関連性を示したものがあります。
発作後の脳活動の抑制:PGES; postictal generalized electroencephalographic suppressionが遷延(50秒以上)するほどSUDEPのリスクが高いというデータです。
PGESは「発作終了後30秒以内に、1秒以上の持続で脳波活動が片側性あるいは両側性に10μV以下に抑制された状態」と定義されます。
Lhatoo SD, et al. Ann Neurol 2010; 68: 787-96.
このようにSUDEPの病態に、「脳」が関連している可能性があります。
しかし、PGES自体は強直間代発作の後によく認められる状態のため、これのみでSUDEPを予知することは困難と考えられています。
したがって、やはり脳波所見でSUDEPを予測することは現時点では困難です。
病理的な研究ですと、SUDEP例では、自律神経を司る領域(parahippocampal gyrus, superior temporal gyrus, pulvinar)においてIba1-expressing microgliaの発現がコントロールに比べて多く、てんかん患者における自律神経の破綻とSUDEPとの関連が示唆されています[Somani A, et al. Epilepsia 2021;62:1318-28]。
最後に
なかなかいつ起きるかも分からない起こって欲しくない出来事を医療機関などで面と向かってお話しすることには勇気がいると思います。
したがって、このようなサイトで情報を集める事で少しお役に立つことが出来ましたら幸いです。