抗てんかん薬の薬物動態

この記事では、抗てんかん薬の薬物動態について解説しています。

はじめに

抗てんかん薬の薬物動態を理解して治療にあたることは大切です。

なぜなら薬物の特殊性を考えると、発作を予防するための薬ですので1日のなかで可能な限り血中濃度の低下がない方が良く、副作用を考慮するとあまり最大の血中濃度が上昇しないようにコントロール必要があるからです。

抗てんかん薬は有効血中濃度と、副作用の出現する血中濃度がちかい薬です。

体内での薬物動態を理解するために、いくつかのパラメータを理解する必要があります。

有効血中濃度(μg/ml)半減期(T1/2)(hr)Tmax (hr)
VPA50-10011-202-4
PB15-4070-1300.5-4
CBZ4-1210-264-8
LEV12-466-80.5-2
PER0.05-0.453-1360.25-2

薬物動態に影響を与える因子

半減期(T1/2)

薬物の血中濃度が安定するまでに、半減期の約5倍の時間が必要といわれています。

したがって、薬剤の効果判定の時期を考える時に半減期を考慮することが大切です。

同様に薬を減量・中止する時も、一定期間体内にとどまっていますので、やはり半減期は大切になります。

また、併用薬により、半減期は変動します。

特に酵素誘導薬剤(フェノバルビタール、カルバマゼピン、フェニトイン)の併用により、半減期は短縮します。

また、一般的に半減期が短い薬は、1日の内服回数が多く(1日3回)、半減期が長い薬は内服回数が少ないです(1日1回)。

ピーク時間(Tmax)

内服してからどのくらいで血中濃度がピークに達するか、の目安です。

発作の起きやすい時間から逆算して内服する事で有効性が増すことがあります。

同様に、副作用の判定や対応にも参考とすることがあります。

剤形

薬剤の剤形も、血中濃度の変動に影響を与えます。

除法剤は半減期が長くなります。

年齢や合併症の影響

一般的に小児では薬剤の代謝早く半減期が短い傾向にあります。

また、薬剤が腎排泄か肝排泄かにより、腎機能障害・肝機能障害の際の投与量に調整が必要な場合があります。

代謝酵素も個人差が大きく、特にクロバザムの代謝がpoor metabolizerだった場合に、代謝されにくく体内に長時間が残存します。

薬剤相互作用

併用薬や食物により、血中濃度へ影響がでる場合があります。

併用薬は、抗てんかん薬の場合もありますし、別の薬剤のこともあります。

抗てんかん薬の相互作用については別の記事をご参照下さい。

抗てんかん薬の相互作用以外に有名なのが、バルプロ酸とカルバペネム系薬剤の併用禁忌、カルバマゼピンのグレープフルーツなどがあります。

血中濃度測定

個人差が大きいため、理論値と実際の血中濃度が異なることが良くあります。

したがって、血中濃度を定期的に測定することで治療や副作用のコントロールに役立つことがあります。

あくまで、「有効血中濃度」は参考値になるため、例えば血中濃度が低くても良く発作がコントロールされていれば必ずしも増量する必要はありません。

一方で血中濃度が高めでも、副作用が許容されて有効な場合も同様です。

しかし、無効な場合に血中濃度が低ければ、薬剤自体が無効な可能性も当然ありますが、投与量が少ない、上記の因子により血中濃度が上がりにくい状態であるという可能性があります。

血中濃度の上昇パターン

抗てんかん薬には、血中濃度の上昇パターンがいくつかあります。

薬剤を増量すればその分血中濃度が上昇する線形のパターンや、はじめはなかなか増量しても血中濃度があがらないのに、ある時点で急に上昇するパターンなどがあります。

例えば、カルバマゼピンは少量では、血中濃度がなかなか上昇しにくく、ある時点で急に毛中濃度が上昇することがあります。

代謝産物

測定が困難なものも含めて薬剤の代謝産物には、薬効があることがあります。

半減期の長い代謝産物にデスメチルクロバザムやデスメチルジアゼパムなどがあります。

最後に

抗てんかん薬の薬物動態について説明しました。

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