「てんかん」とはどのような病気か?

てんかんのイメージ

皆様「てんかん(Epilepsy)」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

「よく分からないけど怖い」「治らない病気というイメージ」「急に意識を失ってけいれんする」など、その人によって様々だと思います。

これらのイメージは正しくもあり、間違ってもいます。その理由は後述します。

ここでは、専門家ではなく、一般の方にむけて「てんかん」について説明していきたいと思います。

てんかんとは何か?

「てんかん」は「脳からの過剰な放電により発作を繰り返す慢性的な脳の状態」のことをいいます。

ここでいくつか大切なキーワードがでてきましたので、ひとつずつ説明したいと思います。

キーワード 「脳」

まずは、「脳」というキーワードです。急にけいれんする病気は実はたくさんあります。例えば低血糖や、心停止して脳への血流が保たれない場合などです。これらは、体の別の部分が原因でけいれんという症状を呈する「てんかん」とは別の疾患です。

その前に、そもそも「けいれん」とは何でしょうか?「けいれん」は簡略化して言いますと筋肉が勝手に(自分の意志ではなく)動いてしまう症状のことをいいます。すなわち「けいれん」は症状、「てんかん」は疾患名です。

「てんかん」の発作で「けいれん」することはありますが、「けいれん」を起こす病気がすべて「てんかん」というわけではありません。ここから先は「てんかんの診断・検査」でも触れていく予定ですのでいったん置いておきます。

キーワード「発作」

次のキーワードは「発作」です。てんかんの発作にはたくさん種類があります。

そうです、発作のひとつが「けいれん」です。ただそれ以外にも数秒間だけぼーとする欠神発作などもあります。「(てんかん)発作」という言葉は心臓発作とか喘息発作とか脳卒中発作などもあるように、臓器が普通に機能している状態と対比して、機能(もしくはその一部が)がonとoffのように阻害されている状況を示しています。

キーワード「慢性的」

この発作を「繰り返す慢性的な状態」がてんかんです。原則的には2回以上の発作を繰り返して診断にいたりますが、その人によって発作の種類や頻度は、本当に千差万別です。

そうです。このてんかんの多様性が、「てんかん」のイメージがつきにくいひとつの要因だと私は考えています

また、1つの検査が陽性=「てんかんの診断です」とはならないところもこの病気の難しさかもしれません。ときには専門家でも診断に苦慮することは珍しくありません。

最後に

ネガティブな話が続いてしまいましたが、自然に終息するタイプや、薬が良く合って内服を続けていれば、日常のほぼすべての活動を行える方も多いのも事実です。また、日本で使用できる抗てんかん薬も増えてきているなど明るい材料もあります。

このサイトの目的は、このように簡単ではない「てんかん」の診療に、少しでもお役に立てればと思ったことが動機です。通常、医療機関における外来診療の時間は有限です。ここに書いてあることが100%正しいわけではありませんので、その点はご注意頂ければと思いますが、主治医とのご相談の際に当サイトの内容で、もしお役に立つことがありましたら幸いです。