この記事では先天性サイトメガロウイルス感染症について、とくにてんかんについて注目して解説しています。
はじめに
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は、赤ちゃんが母の胎内にいる時に感染症に罹患することで様々な症状を呈するTORCH症候群のひとつです。
その症状は全身にわたりますが、個人差が大きく様々です。
代表的な徴候のひとつに感音性難聴があります。
てんかんと関連した神経系の合併症としては、脳内の石灰化、脳室拡大などがあり、結果的にてんかん発作という症状を呈することがあります。
これからもう少し詳細に先天性サイトメガロウイルス感染症について説明します。
先天性サイトメガロウイルス感染症とは
前述のように、赤ちゃんが母の胎内にいるときにサイトメガロウイルスというウイルスに感染することで様々な症状を認めます。
サイトメガロウイルスとは、比較的一般的なウイルスで日常生活を送っているなかで何気なく感染していることが多いウイルスです。
しかし、たまたま初感染が妊娠中だと先天性サイトメガロウイルス感染症のリスクが高まってしまうと言われています。
しかし、いったんサイトメガロウイルスに感染した後でも、何かしらのきっかけで妊娠中に再増殖することもあります(初感染よりも先天性サイトメガロウイルス感染症の発生リスクは低いと考えられています)。
例えば、難聴などは新生児期の聴力検査をすりぬけて(その後に難聴となって)後日見つかる場合も多く、実際の先天性サイトメガロウイルス感染症の集計は難しいと考えられます。
症状
先天性サイトメガロウイルス感染症では様々な症状を生じ得ます。
例えば、
- 低出生体重
- 小頭
- 紫斑
- 難聴
- 発達障害
- てんかん
- 視力障害
検査
診断は、生後3週間までに採取された児の尿、臍帯血、もしくは出生時の血液・唾液などからサイトメガロウイルスを検出することによりなされます。
それ以外にも、先天性サイトメガロウイルス感染症を疑う様々な症状の評価のため、血液検査、聴力検査、頭部画像検査、眼科検査などを組み合わせで実施します。
生後3週間以上経過して、先天性サイトメガロウイルス感染症が疑われる場合には、乾燥保存臍帯や先天代謝異常症スクリーニング検査のために採取された呂止血を用いたウイルス検査(PCR検査)を実施する場合がありますが、これらの検体に含まれるウイルスが少ないため、正確にウイルスを証明できないという欠点があります。
治療
赤ちゃんの時期にウイルスの治療をすることにより聴力の予後に改善が得られたというデータがありますが、副作用の問題もあり、治療を行うことに関してはまだ定まっておりません。
現時点では赤ちゃんの全身状態を考慮しながら、治療を実施することのメリットとデメリット(リスク)を整理して、治療するかどうかを検討することになります。
てんかんに関しては、先天性サイトメガロウイルス感染症に特異的な治療はなく、個々人にあわせててんかんの診療を行っていきます。
全身の合併症がある場合には、それらを考慮した治療戦略が必要になります。