ここでは、小児期の特に乳児期に発症する代表的なてんかんのタイプとしてドラべ症候群(Dravet症候群)について紹介したいと思います。
はじめに
ドラべ症候群とは、Dravetという先生が1978年に初めて報告したてんかんのひとつのタイプです。
過去には、乳児重症ミオクロニーてんかんとの呼ばれてきましたが、その後研究が進み(特に遺伝子のことなど)色々なことが分かり、ドラべ症候群という呼称が適切と考えられています。
特に、経過が極めて特徴的なてんかん症候群ですので、そのポイントについて重点的に説明したいと思います。
診断
発症は1歳未満で、特に発熱や体温上昇をきっかけとして、けいれんを繰り返すことが特徴です。
少しの発熱・体温上昇でけいれんが起きてしまう
発熱や体温上昇は、熱性けいれんのように感冒や突発性発疹のように38~40度くらいまで体温上昇することで、けいれんのきっかけとなることもありますが、このてんかんの特徴として、お風呂に入っただけ、のような軽微な体温上昇でもけいれんする可能性があります。
このあたりの特徴は、他のけいれんをきたす疾患との鑑別ポイントとなることがあります。
けいれん重積(長時間のけいれん)の頻度が多い
けいれんのかたちは、全身のけいれんのこともありますが、ドラべ症候群の特徴として半身性(体の左、もしくは右側のみ)のけいれんを認めることが特徴です。
また、けいれんの持続時間が長くなり、自然に消失せずに「けいれん重積」という状態に陥りやすいことも大きな特徴です。
1歳以降の経過
1歳前に発症しますが、発症までの発達に問題がないことが多いものの、残念ながら発症後の発達は遅れがちになります。
また、運動失調という姿勢保持や歩行時などにふらつく症状も1歳以降に明らかになることがあります。
発作の経年的な経過も特徴的で乳児期(1歳未満)は「けいれん重積」が多いですが、その後は「けいれん重積」は減り、ミオクロニー発作や欠神発作などを合併することがあります。
様々なてんかんの発作型については以下の記事もご参照下さい。
原因
原因として、SCN1A遺伝子の異常を認めますが、必ずしも全員の方がこの遺伝子異常を認めるわけではなく、診断は上記の特徴的な症状と経過によって行います。
また、ドラべ症候群の特徴を一部認めるドラべ症候群に似た状態(辺縁群)のてんかん患者さんもたくさんいらっしゃると考えられています。
治療
治療は残念ながら簡単ではないことが多いです。
抗てんかん薬を使用してもけいれんを予防できないこともあります。
様々な治療・対応をしても知的障害を認めたり、運動失調により運動に支障をきたしたりすることがあります。
また、突然死のリスクが、どのてんかん患者さんにもありますが、特にドラべ症候群では高率であることがデータで分かっています。
てんかんと突然死については、別の記事もご参照下さい。
「てんかんと突然死」
抗てんかん薬には副作用もありますので、発作と副作用のバランスを考えながら治療にあたることが大切です。
抗てんかん薬の副作用についても、別の記事をご参照下さい。